北陸新幹線、開通。
新しい現場を、自分たちでつくる。
昨日までの常識が、
通じない世界へ。
何年も、在来線の現場に身を置き、一から仕事を覚えてきた。地元に北陸新幹線が開業することになり、新幹線設備の保守を任された。まだ建設中だった新高岡駅で、新しく生まれようとしている駅を目の当たりにする。昨日までの常識が、通用しない世界。同じJR西日本グループにある山陽新幹線の方法をそのまま持ち込めばいいかというと、そう簡単な話ではない。誰もが手探りで、北陸新幹線という新しい現場に適したルールや仕事の進め方を、自分たちでつくりあげていった。新幹線の設備を守る指揮者の一人として、また一から経験を積んでいく。その数年のうちに、かつて慣れ親しんだ在来線の現場でも、大きくルールが変更された。安全を追求する飽くなき過程で、法規や仕様は変わり続ける。だから自分も、日々新しいことを吸収し、変わっていく。
ボーダーを下げるな。
人の上に立つ人の、
心がまえ。
「ボーダーを下げるな」。この言葉が、今も深く心に刻まれている。自分が車両基地の副所長を務めるようになるまでの15年間、多くの人とのかかわりが自分を導き、育ててくれた。今度は自分が、部下たちの成長を支え、導いていく番だ。人の上に立つとは、どういうことなのか。その心がまえを教えてくれた一人が、前事業所の所長だった。当時はその上司が、なぜそんなに細かいところまで注意をするのか、分からなかった。やがて別の部署へと移られる際に残してくれたのが、「ボーダーを下げるな」という一言だった。人は弱いもので、うまくいかない時ほど甘えが出てしまう。しかし、その判断の緩みが自分だけでなく部下や事務所全体の意識まで低下させてしまうことにつながる。この言葉を今も思い出し、自分のボーダーを見つめ続けている。
感謝を伝え、
チームで「あした」を
つないでいく。
この仕事は、自分一人では成立しない。だからこそ、一人ひとりとのかかわりの中で、当たり前のことを大切にしたいと思う。それが自分にとっては、「感謝を伝えること」だ。つい先月、副所長として車両基地内のメンテナンスセンターに着任し、また今までのルールとは違う世界で一歩を踏み出した。分からないことばかりの毎日で、同じ事務所の仲間全員に助けられている。そのことに感謝し、言葉で伝えていきたい。現場に出た時も、協力会社の仲間たちの経験や意見を活かし、お互いに支え合いながら、一つの現場を組み立てていく。お互いが信頼のもとで、気持ちよく、安全に仕事できるように、感謝の気持ちを言葉にして受け取ってもらう。これからも「あした」をつないでいくために、「ありがとう」という言葉を大事にしていきたい。
「あした」のためのストーリー02
白山新幹線メンテナンスセンター
副所長 T.I 2007年入社
TO BE CONTINUED.